気象予報士2670号(金子大輔)の天気・気象ブログ

お天気・気象ネタを書いていくブログです♪。気象好きな方、空や雲が好きな方、よろしくおねがいします。

1995年12月25日~恐怖のクリスマス寒波、12月史上最強の寒気!

1995年のクリスマス明け、とてつもない寒波が到来した。
12月史上、最強クラスの寒気と言っても過言ではないだろう。

各地に雷を伴った大雪や暴風雪をもたらし、
三重県四日市で積雪53㎝(史上1位)、滋賀県彦根で36センチを記録。


冬型のときには、
絶対と言っていいほどまとまった雪が降らない関東平野でも、
埼玉県辺りまで雪雲が侵入。

宇都宮では3センチの積雪。
館山、伊豆大島でも雪を観測し、八丈島も雷を伴う雪となった。
東京は快晴でありながら、最高気温5.0℃どまり。

温暖な西日本でも雪が降り、奈良2センチ、津8センチの積雪。

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上空約1500メートルで-12℃の寒気が、
関東をすっぽり覆っているのは驚異的。

館野の850hPaの気温は、12月としては史上最低の-12.9℃、
500hPaでも12月史上3位の-39.2℃。

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早い積雪~2002年12月9日

2002年12月9日、関東各地で積雪に至りました。
宇都宮17センチ、水戸14センチ、千葉5センチ、横浜3センチ、都心1センチなど。

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上空約1500メートルの寒気から判断すると、
沿岸も含めて雪になってもおかしくない気温です。

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積雪5センチ以下の南関東と、10センチ以上の北関東を分けたのはなんでしょうか。ずばり、地表の気温です。降水が強い時間帯に、東京では1℃前後であったのに対し、水戸は0℃台前半、宇都宮は氷点下でした。南岸低気圧の大雪では、ほんのわずかな気温差が明暗を分けることは珍しくありません。

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北緯が東京とほぼ同じ八王子では、降水期間中の気温が0℃台。
現に八王子では10センチを超える雪が積もったとのことです。

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1991年12月27日の大雪~大雪警報とともに止む……~

東京の大雪事例として、ちょっとおもしろい感じのケースを紹介します。

1991年12月27日、昼前から雨が降り始めました。雨は14時前後に雪へと代わり、夕方にかけて、かなり強い降り方になりました(最大で1時間に3.5ミリ)。しかも大粒のボタン雪でかなりの迫力……。

気象庁は東京地方に「大雪警報」を発表し、明朝までに20センチ積もるとしました。177で聞くと「今夜は、北の風、大雪でしょう」という、このとき一回しか聞いたことがないような予報を報じていたのが印象的です。

しかしその直後、雪は雨に変わってしまったという、なんともむなしい事例となりました。結果的に都心で1センチ、練馬区7センチ、熊谷4センチなど。

天気図を見ると、南岸低気圧に加えて、日本海に低気圧があるのが特徴的です。小さな副低気圧でなく、日本海にしっかりした低気圧があって大雪になった例は珍しいです。

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雪が激しかった時間帯の気温は1℃前後。大雪としては、やや高温下であったと言えます。降水が弱まるとともに昇温して雨に変わる、という傾向も顕著です。

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21時、関東南部の上空約1500メートルの気温は0℃以上、雪が降る状況としてはかなり気温が高いと言えます。

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午前9時の館野(茨城県)のエマグラムです。上空約1500メートルの気温は-3℃くらいなので、これなら雪が降ってもおかしくありません。

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しかし21時。上空約1500メートルから地表まで、ほぼプラスの気温となっています。これでは雪のまま落ちてくるのはかなり無理があります。日本海の低気圧接近に伴って急激に上空の気温が上がり、雨に変わってしまったのでしょう。

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1981年に関東に近づいた台風

先日に続き、1981年に関東に接近した台風のお話です。この年、関東地方に接近した台風は2つありました。

 

台風15号
8月22日に最接近。東京の総雨量69.5ミリ(最大1時間雨量11.5ミリ)。最大瞬間風速22.8メートル。銚子の総雨量33.5ミリ(最大1時間雨量8ミリ)。最大瞬間風速36.4メートル。逆「くの字」で進んだやや珍しいコースです。965hPaで直撃したわりには、風雨はそこまで激しくなかったようです。

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台風24号

10月22日に最接近。東京の総雨量218ミリ(最大1時間雨量46.5ミリ)。最大瞬間風速28.8メートル。関東地方としては、トップクラスの暴風雨をもたらした台風。1996年の台風17号と似ている。

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【2002年1月22日】広尾で1時間に41.5ミリ!雪としての降水では最強か?

東京あたりの場合、降水量1ミリが雪になると約1センチの積雪になります。1時間に2、3ミリの雪といえば、かなり強い降り方ということができ、気象学的にも1時間に3ミリ以上の降水が雪として降ると「雪強し」と記録されるのです。


降水相が雨の場合には、1時間に100ミリ以上というバケモノ値もありうるのですが、雪が降る低温のときには、空気中の水蒸気も少ないため、このような値はまず出ません。

では、雪としての降水で最も強いのは、いったいどれくらいでしょうか?

2002年1月22日、北海道十勝地方の広尾で、1時間に41.5ミリという記録があり、これが国内最強ではないでしょうか?もしもっとすごい値をご存知の方がいらっしゃいましたら教えてください。

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このとき、日本列島を発達した低気圧が通過し、十勝地方は暴風雪になっていたのです。東京でも雷を伴う強い雨が降っていました。

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私は1986年3月23日の爆弾低気圧のとき、1時間に10ミリ近い降水が雪として降っている光景なら見たことがありますが、「綿菓子の祟りのよう」でした。

1時間に41ミリの雪……いったいどんなすさまじい光景だったことでしょう。

1980年に関東に近づいた台風

過去、関東に接近した台風に再度クローズアップしてみたいと思います。まずは「ほどほど昔」で、人々の記憶から消えつつある1980年あたりを見てみます。この年、関東地方に接近した台風は2つありました。

★台風3号
5月21日に最接近。東京の総雨量30ミリ(最大1時間雨量5.5ミリ)。最大瞬間風速16.5メートル。銚子総雨量34ミリ(最大1時間雨量7ミリ)。最大瞬間風速28.5メートル。東方沖を離れて北東に進んだパターン。

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台風19号
10月14日に最接近。東京の総雨量68ミリ(最大1時間雨量25.5ミリ)。最大瞬間風速20.6メートル。南岸、八丈島のやや北を東北東に進んだ。この台風は最盛期に890hPaまで発達し、関東接近時の中心気圧も960hPa程度と危険なレベルだったものの、南海上を東寄りに進む台風は、極端な荒天にはならないようだ。

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東京など、関東に大雪が降るとき(南岸低気圧)

東京など太平洋側の地域は、一般に雪があまり降りません。とくに関東平野では、「西高東低」の冬型の気圧配置で強い寒気が流れ込んでいるときには、絶対と言っていいほど、まとまった雪にはならないものです。


そんな関東でも、まれに、20センチ以上の雪がどかっと降ることがあります。この2枚の写真は2014年2月8日の大雪のときのものですが、東京は27センチ、千葉は33センチの大雪に見舞われました。

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では、ここ最近、関東に大雪をもたらしたときの天気図を並べてみます。何か共通点はありませんか?


 

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↑2018年1月22日。東京23センチ(降水量24ミリ)、横浜18センチ(降水量20ミリ)など。

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↑2014年2月15日。河口湖143センチ(降水量?)、甲府114センチ(降水量98.5ミリ)、秩父98センチ(降水量117.5ミリ)、前橋73センチ(降水量129ミリ)、東京27センチ(降水量96ミリ)、横浜28センチ(降水量80.5ミリ)など。

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↑2014年2月8日。東京27センチ(降水量31ミリ)、千葉33センチ(降水量46ミリ)など

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↑1992年2月1日。宇都宮20センチ(降水量18ミリ)、東京17センチ(降水量51.5ミリ)、勝浦5センチ(降水量31ミリ)、甲府5センチ(降水量21ミリ)など。


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↑1994年2月12日。外房を除き、関東甲信のほぼ全域で約20センチ。


そう、必ず関東の南を、低気圧が東進しているのです。この低気圧は南岸低気圧と呼ばれています。

南岸低気圧は、北からの寒気と、南からの湿った暖かな空気をともに巻き込んでいきます。低気圧のコースや発達具合によって降水量や気温が大きく変わります。

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低気圧が陸地に近いほど、降水量は多くなりますが、暖気の影響も受けやすくなります。陸地から遠いと降水量は少なくなりますが、寒気の影響が強くなります。

 

さらに、低気圧が猛烈に発達すると暖気・寒気ともに激しく巻き込みますが、発達しないと巻き込みも弱くなります。

 

南岸低気圧が予想されるときには、これらの兼ね合いを計算しなければなりません。しかも、地上気温が0.5℃異なるだけで、降水相(雨か雪か)は大きく変化してしまうという恐ろしさ。東京の雪予報が極めて難しいのは、こんな背景があるのです。